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Stack Overflow DevDaysに参加してきました

10/9(金)に行われたStack Overflow 10月「DevDays」 | Peatixに参加してきました!
平日朝9時半からというマッチョなスケジュールでしたが、いつもお世話になりすぎているStack Overflowのイベントとあって、とても楽しみにしていました。
でもこの平日の日中という開催日時のために、行きたくても行けなかった人も多かったんじゃないかな・・・と。

内容としては最初にジョエル・スポルスキさんのセッションがあったあと、有志によるセッション大会といった感じでした。
それと、お昼のあとには日本で一番ポピュラーな技術情報共有サービスであるQiitaを開発しているIncrementsのCEOである海野さん@yaottiとジョエルさんが二人で壇上に並んでのQ&Aコーナーもありました。
ジョエルさんの発表もQ&Aもその場でしか聞けない内容でしたが、とても良い内容だったので自分なりに概要をまとめてみます。

大きなオンラインコミュニティを継続的に維持する方法 - Stack Overflow最高経営責任者 Joel Spolsky @spolsky

ジョエルさんによる発表。
大きなオンラインコミュニティであるWikipediaの例を挙げながら、大規模なオンラインコミュニティがはらみがちな問題点とStack Overflowの掲げる思想が語られました。

  • インターネットにテキストボックスを見つけると、人は何を書いてもいいと思ってしまうらしい
    • 一般人に「匿名性」と「観客」が与えられると、一般人は不良になる
  • そのためにオンラインコミュニティにはルールが必要
  • しかし、ルールが有益に働かない例もある。例えば、Wikipedia
    • Wikipediaには「確認できる情報」しか載せることができない
    • ある作家が、自分の著作に関した間違った情報がWikipediaに載っているのを見て、内容の修正を申し立てた
    • Wikipedia側からの回答は「No」だった
      • 「著者が著作について一番詳しいということは理解するが、修正の内容が事実であることを確認できるリソースがない」とのこと
    • これは実に馬鹿らしい
    • 「真実」と「確認できる情報」は一部しか重ならない。確認できない真実も多いし、確認できる嘘の情報もまた多い
  • 良いコミュニティを維持するためにルールは必要だが、このようにルールのせいで人が驚いたり納得できないことも起きうる
  • ではStack Overflowが大切にしているルール・思想は何か?
    • 目指しているのは「会話より結果」
      • Stack Overflowの代表的な質問は、一人が質問し、数人が答え、数百〜数千人が閲覧する
    • ポリシーは "We Hate Fun"
      • Stack Overflowはソーシャルコミュニティではなく、掲示板でもなく、談笑する場所でもなく、プログラマーのリソースとなるべき場所である
      • "厳しさ"やドライな雰囲気が感じられるとしたら狙い通り
  • 良いコミュニティを維持するためには良くないものを取り除く必要がある
  • しかし、殺伐としすぎていると、将来コミュニティに貢献してくれそうな有望な人が一度の失敗でコミュニティから離れてしまうことにも繋がる
    • その対策のひとつとして、良くない質問につけるタグの表現を変更した
      • ClosedOn Hold終了編集待ち
      • Too localizedOff topic局所的すぎる質問トピック外の質問
      • Not constructivePrimary opinion-based建設的でない質問主観的な意見の質問
      • Not a real questionUnclear what you're asking質問ではない質問したい内容が明瞭でない
    • これには絶大な効果があって、タグ付けされた質問の再編集率が2倍以上になり、投票率も増した
    • 言葉遣いは大切である
      • できるかぎりポジティブで、見た人がどう行動すればいいのかわかる言葉を使うこと
  • 良いコミュニティを維持するために、適切な説明や言葉でルールを伝えていく

Stack Overflow & QiitaのCEOにQ&Aタイム

※ 記憶が曖昧な部分はtogetterのツイートを参考にさせていただきました

Q. ユーザーのフォローやDMなどのSNS的機能について自分のサービスにおいてはどういった考えを持っているか?

Stack Overflow(ジョエルさん)

Stack Overflowが大切にしているのは「会話より結果」なので、質問の投稿者や回答者が誰なのか?といったことは重要ではない。
そのため意図的にアンチソーシャルな厳しい作りにしている。
当時新しいサービスとして盛り上がっていたFacebookとは逆の方向に進みたかった。

Qiita(海野さん)

QiitaはStack Overflowと違って「質問→回答」という形式ではないので、投稿された記事を求めている人に届けるためにフォローなどのSNS的な要素を利用している。

Q. サービス開設〜ユーザーが集まってサービスが回り出すまでの間、どうやってユーザーを集め根付かせたか?

Stack Overflow(ジョエルさん)

Stack Overflowを開設したのは2008年だが、その時には2000年から個人でやっていたブログが一日に3万ビューほどあるぐらいに読者がとても多かった。
なので2008年のStack Overflow開設時には当日だけで3万人の利用者が集まり、1週間で9万人〜12万人の利用者に達した。

Qiita(海野さん)

自分の周りの技術者が使ってくれたのと、はてなブックマークTwitterなどで広まっていった。
ある程度記事が集まると徐々にGoogle検索でも引っかかるようになってきて、認知度が上がっていった。

Q. 自分のサービスに対して何か印象的なエピソードはありますか?

Stack Overflow(ジョエルさん)

Stack Overflowを公開したすぐあとに、文中のURLをリンクにする改善をしようとしたら正規表現でのマッチングがうまくいかず、Stack Overflowに自分で質問を投稿してみた。
答えを得るまでには時間がかかるだろうと思ったら、同じ質問が既にあるよとサジェストされた上、そこに適切な答えも投稿されていて、公開当初からサービスが有用に機能していることに感動した。

Qiita(海野さん)

バグによってQiitaのサーバーを落としてしまったとき、解決策を検索したら検索結果一覧にQiitaの記事が見つかったので見ようとしたらサーバーが落ちていて見られなかった(会場笑)
Googleのキャッシュで見ることができ、解決できた。

Q. Down voteの機能について

Stack Overflow(ジョエルさん)

Stack Overflowが大切にしているのは「真実」なので、そのためにDown voteは必要。
ただそれによってユーザーが傷つくこともあるので、気持ちは大切にしてほしい

Qiita(海野さん)

(※QiitaにはDown voteの機能がない)
善意で投稿された記事に対してネガティブなリアクションをさせる機能はとてもセンシティブな問題だと考えている。
かわりに編集リクエストの機能でコンテンツの良さを保とうとしている。ただ、(Down voteのような機能も)検討はしている。

Q. 類似サービスと比較しての強みはどこだと思いますか?

Stack Overflow(ジョエルさん)

ユーザー数。Stack Overflowに投稿するのが一番多くのユーザーに見られ、一番多くの回答がつく。

Qiita(海野さん)

ジョエルさんの回答と同じ。
Qiitaでは記事投稿のためのデスクトップアプリの提供やAPIの公開など、記事を共有してもらう施策に取り組んでいる。

Q. サービスに対するユーザーからのフィードバックをどう受け止めていますか?

Stack Overflow(ジョエルさん)

すべてのフィードバックに感謝するが、すべてのフィードバックを採用するわけではない。
すべての意見に共感して取り入れてしまえば、インターネットはトイレに落ちた猫の写真だらけになる(←米国ではこの写真が人気?)

Qiita(海野さん)

毎月ユーザーミートアップを開催するなど、ユーザーの意見を吸い上げられる取り組みを行なっている。
ただ、たとえばユーザーから「こういう機能がほしい」というフィードバックがあったときは、「その機能を実装すべきか?」よりも「その機能によって、ユーザーはどんな問題を解決したいのか?」を考え、「その問題に対する最適解は何か?」という視点で考えなおしている


以上です。

個人的にはStack Overflowがここまでコンセプトを尖らせ、「厳しさ」を意識して作られたサービスだとは知らなかったので衝撃でした。
そこまでしてはじめて、純度の高いあの価値ができあがるんですね。
ジョエルさんのセッションの中で語られていた、Stack Overflowが掲げるこのポリシーにしびれました。

他のセッションも面白かったです。長くなってしまうので資料へリンクだけさせていただきます。

その他のセッションのスライド

ビルトイン・セキュリティのススメ Dev Days 2015 Tokyo - Riotaro OKADA by @okdt
プロダクトのセキュリティについてや、必要なセキュリティをレベル分けしたOWASP ASVSという指標について。

とある業務オペレーション自動化の話 // Speaker Deck by @onigra_
RubyRailsで業務を自動化した具体的なノウハウのお話。

1 Year Retrospective: how to increase developer productivity // Speaker Deck by @kenchan
チームビルディングやプロジェクトマネジメントについてのお話。

3D Printer as a welfare program - Google スライド by @technohippy
3Dプリンタの種類や、3Dプリンタが会社にあることで得られる恩恵などw

UX専門家から見た「Running Lean」の改善ポイント 〜「Lean Customer Development」と読み比べ〜:201… by @storywriter
「実践リーンスタートアップ」と「リーン顧客開発」の差分、主にユーザーヒアリングの具体的なポイントについて。

エンジニアのためのSketch3入門 // Speaker Deck by @androhi
Sketch3の紹介と実際にZaimのロゴをSketchで作る様子のデモ。

エンジニアにとって欠かせないインフラとなっているStack Overflow
↑こちら、スライド公開されていましたら教えていただければと思います><
Stack Overflowの統計・研究についてのお話で、興味深いグラフなどとても面白かったです。

Meteorでつくる3分間プロトタイピング // Speaker Deck by @besutome
Meteorについて。実際に3分でサイトをデプロイするデモでした。速い・・・

リアルタイムに映像を繋いで広げるデモ(スライドなし)


CoffeeScriptでパケットアナライザーを作る
↑こちら、スライド公開されていましたら教えていただければと思います><
CoffeeScriptとElectronでリアルタイムにパケットを表示してました。かっこよかった。

[Stack Overflow Dev Days 2015]Android 6.0 Marshmallow App Permissions… by @korodroid
Android6.0から変わったパーミッションの仕様について。

Zaim 500万ユーザに向けて by @watura
容量が膨れ上がってしまったデータベースをシャーディング(分割)したときのエピソードとノウハウ。


こんな感じでした!
ツイートのまとめはこちら。 Stack Overflow DevDays - Togetterまとめ

最初に募集ページのタイムテーブルを見た時は、やたらいろんな話題のセッションが散らばってるなーと思ったのですが、実際に聞いてみるとどれも質の良いお話でとても楽しかったです。(途中で抜けて会社戻ろうかと思ってたけど、結局最後までいてしまった)

あとお弁当とか

無限コーヒー・お菓子とか

参加記念のTシャツとか

この辺りもとても充実していて、参加無料なのに大丈夫なのかな・・・?って思いつつ、かなりエンジョイしてしまいました。

Stack Overflowのみなさま、素敵なイベントをありがとうございました!!
参加したかった日本のエンジニアがまだまだいたと思うので、次回開催も楽しみにしています><

それと、業務扱いで勉強会に参加させてくれた会社にも感謝です( ´ ▽ ` ) ありがとうございました!